VR酔いの症状と原因
VRを利用する上で最も重要な課題、それは「VR酔い」です。
VR酔いとは、VRの世界に没入している時に起こる症状で、
使用者に「乗り物酔い」と同じ症状が表れます。
頭痛、吐き気、目まいに始まり、
冷や汗、手足の痺れなどの症状を経て、
最後は嘔吐に至ります。
日本では「動揺病」と言われるようですが、 英語では「Virtual Reality Sickness」や「Cyber Sickness」と呼ばれています。
1990年代後半あたりから研究が行われ論文も書かれています。
「VR酔い」が発生する原因は、目で見た視覚と、体で感じる平衡感覚(前庭覚)のズレからくる自律神経の乱れだと言われています。
まず、平衡感覚の仕組みを知ってもらいたいと思います。
ヒトの平衡感覚は、内耳にある半規管と耳石が担っています。
三半器官 © wikipedia
半規管(三半規管)は傾きを感じる器官です。 3つの輪っか上のチューブが90度ずつ別々の方向に傾いた作りになっています。 チューブの中はリンパ液で満たされており、チューブの内側の壁には多数の毛があります。
「頭が動く→リンパ液が動く→毛が動く→有毛細胞が刺激される→脳に傾き情報が伝わる」という仕組みです。
また、1つの半規管が伝えられるのは一方向への動きだけですが、3方向に広がっていることで 縦・横・奥のXYZ軸の3ベクトルの情報を脳に伝えることができます。 それによって3次元の傾きを認識することが出来るようになっています。
また、加速度の認識は耳石器が担っています。
卵形嚢と球形嚢には耳石があります。
「頭が動く→リンパ液と耳石のズレが生じる→有毛細胞が刺激される→脳に加速度情報が伝わる」という仕組みです。
卵形嚢による水平方向の加速度と、球形嚢による垂直方向の加速度の情報を合わせることで、 上下左右の加速度を認識することが出来るようになっています。
さて、私自身は、VR酔いの要因はこれに加えて、視覚と脳内予測のズレによる自律神経の乱れも一因だと考えています。
「感覚不一致」と表現したりするようです。
具体的にはこういうことです。
首を傾げたにも関わらず、視界が傾かなかったらどうでしょう?
もしくは、首を右に振ったのに、視界が左に動いたらどうなるでしょう?
あるいは、首を右に振ってから、1秒後に視界が右に動いたらどうなるでしょう?
現実ではありえないことが起こるため、脳内でパニックが起こります。
これが自律神経の乱れとなり、乗り物酔いと同じVR酔いの症状になると考えます。
そこまであからさまな動きの不一致はないにしても、脳は瞬間的にいろいろな情報をキャッチし判断していますので 本人が気づかないレベルで脳のプチパニックが連続して起きている可能性があります。
ただ、メカニズムが複雑ですので、原因を完全に解明し証明するのはそれなりに難しいと思います。
さて、話が長くなりましたので本日はここまでです。
次回以降で、私の考えるVR酔いの対策を紹介していきたいと思います。